外貨建てでクレジットカード支払いをする場合、VISA/マスター/JCB/AMEXなど「国際ブランド」と呼ばれる会社が、カード会社の代わりに外貨両替をしてくれます。
で、その外貨建てでカードを使った時の両替レートは、VISA/マスター/JCB/AMEXなど「国際ブランド」によって違うんです。その違いについて、この記事では解説していきます。
- 1 前提:海外ATM引出しを前提に比較
- 2 前提知識
- 3 先に結論
- 4 2023年8月の単純なレート比較
- 5 ★Master/VISA/JCBのクセ。←3者比較の新しい視点
- 6 アメリカ(米ドル)でVISA/Master/JCB比較
- 7 ユーロでVISA/Master/JCB比較
- 8 台湾ドルでVISA/Master/JCB比較
- 9 中国元でVISA/Master/JCB比較
- 10 マレーシア・リンギットでVISA/Master/JCB比較
- 11 フィリピン・ペソでVISA/Master/JCB比較
- 12 オーストラリア豪ドルでVISA/Master/JCB比較
- 13 韓国ウォンでVISA/Master/JCB比較
- 14 シンガポール・ドルでVISA/Master/JCB比較
- 15 イギリス・ポンドでVISA/Master/JCB比較
- 16 カナダ・ドルでVISA/Master/JCB比較
- 17 タイ・バーツでVISA/Master/JCB比較
- 18 ベトナム・ドンでVISA/Master/JCB比較
- 19 香港ドルでVISA/Master/JCB比較
- 20 インドネシア・ルピアでVISA/Master/JCB比較
- 21 まとめ
前提:海外ATM引出しを前提に比較
まず、前提知識なのですが、外貨建てでカードを使う場面って、大きく分けて2つありますよね。
[2] 海外ATM引出し(海外キャッシング)
で、[1]のカード払いの場合にかかる手数料は↓下の2種類。
手数料②海外ショッピング手数料:カード発行会社(例 楽天,エポス)が取る
手数料①両替手数料:VISA,JCB,マスターカード,AMEXなどの「国際ブランド」が取る。両替レートへ上乗せされている。
で、↑この場合は、①より②の手数料の比重が大きいので、②の節約をまず考えることをおすすめします。(②に関しては、こちらの記事で比較しております。⇒海外ショッピング手数料比較)
で、次に[2]の海外ATM引出し(海外キャッシング)の場合ですが、かかる手数料は↓下の5つになります。
①両替手数料:Visa/Master/JCB/AMEXの両替レートの中に含まれている。通貨ごとに率が違う。
②海外ATM手数料:カード発行会社が取る(→取る会社/取らない会社一覧)。引出1万円超なら220円/回、1万円未満なら110円/回
③ATMオーナー手数料:銀行などATMの持ち主が取る(クレカは無料)。例 タイ220バーツ(約900円)
④利息、海外事務手数料:クレカは利息(1日約0.05%ずつ=繰上返済で減らせる)。デビット/プリカは海外事務手数料(3%など一定額=減らせない)
⑤繰上返済の手数料:国際電話代と振込手数料。ペイジー払い可能なアコム、セディナ、エポスなら無料。
海外ATM引出しの場合は、①の両替手数料の比重が大きいです。②〜⑤は工夫次第で無料にできるからです。
なので、この記事では、「海外ATM引出しでVISA/Master/JCBのどれを使うべきか?」をテーマに解説をしていきたいと思います。
前提知識
VISA、マスターカード、JCB、アメックス。これら「国際ブランド」って、どれを選べばいいか、迷いますよね。
選び方の一つのポイントとなるのが、両替レートの違いです。VISA、マスターカード、JCB、アメックスは、それぞれ独自のレートを使っています。
つまり、ニュースなどに流れる「1ドル=140円」という中間レートに、それぞれ独自に上乗せ分を決めて独自のレートを作っている感じ。イメージとしては、↓こうです。
中間レート 1ドル=140円 のとき
VISAレート 1ドル=140.5円
Masterレート 1ドル=140.4円
JCBレート 1ドル=140.3円
AMEXレート 1ドル=140.8円
そして、それぞれのレートは
します。主要な通貨で見た場合、↓このように変化しています。
●2018年〜2019年:VISA,Master,JCBの差が縮小
●2021年〜2023年:JCBのレートが良い時代 ←今回の調査
●2022年8月〜 :Masterのおトクなクセの出現 ←今回の追加テーマ
マスターカードが一番レートが良かった時代は、すでに終わっています。
このページでは、最新&過去の為替レートのデータ
・2023年8月の31日間 ←新たに追加!!
・2021年11月の30日間
・2019年4月の30日間
・2018年4月の30日間
を元に、VISA、マスターカード、JCBで、どの通貨で、どう選ぶとお得なのか、を分析していきます。
※アメックスは両替レート非公開なので比較に入れていません。ちまたでは、アメックスの両替レートはそんなに良くないと言われています。
先に結論
単純なレート比較ではJCBの圧勝だが、JCBを使えば必ず得なわけではない。Master/VISA/JCBのクセ(下で解説)を考慮して、
2024年8月時点では、↑こういう結論となりました。1年前と結論が変わってしまって、ごめんなさい(汗)。
では、なぜこの結論になったのか、説明していきます。
2023年8月の単純なレート比較
レートだけを見た最新の傾向をまとめると、↓こんな感じです。
●
●VISAとMasterはほぼ同じ(ポンドとペソはMasterがダメ)
●2021年から両替手数料は高止まり傾向(2023年≒2021年>2019年)
●3者の手数料の差が大きい通貨は、英ポンド、フィリピンペソ、マレーシアリンギット、カナダドル、タイバーツ
で、↑これだけを見ると「JCBが得なんだ」と思いますよね。でも、実際にほぼ同時刻にMaster/JCB/VISAで引出す調査をやってみると、JCBが高確率でお得になるわけじゃない。理屈と実態が違うわけです。
何か単純なレート比較とは別の要因があるんじゃないか?という疑問が、↓このクセの発見に繋がりました。
★Master/VISA/JCBのクセ。←3者比較の新しい視点
世界各国でのATM調査と、現地在住の読者さんからのデータ提供により、新しい事実(3者のクセ)がわかってきました。↓これです。
VISA/Master/JCBのクセ(傾向)
●Master: がある(例 8/10のATM引出しには8/9の公式レートが適用される)。なので、ニュースなどで昨日と今日の中間レートを比較し、昨日のレートのほうが良いなら、その日のカード利用は得になる。 のが強み。
●JCB:レートは良い。ただし、翌日のレートが適用される傾向が不安要素。翌日が良いレートなら得するが、翌日が悪いレートなら損をする。つまり、得か損かはギャンブル的。
●VISA:レートは無難な感じ。リアルタイムレートに一番近く、1日の中でもレート変化あり。
↑このクセ前提で考えると、Master/VISA/JCBを比較するとき、それぞれの公式サイトの同日のレートで3者を比較することは意味がないということになります。
だって、同じ8月10日にATM引出しをしたとしても、
Masterは8月9日のレート、
VISAは8月10日のレート、
JCBは8月11のレート、をそれぞれ適用するからです。
適用されるレートの日付が違うのに、8月10日のレートを並べて比較しても意味がないですもんね。
(私が今までやってきた比較は半分無駄でした。涙)
ということなので、この新事実(クセ)を元に、得する使い方を考えると、↓こんな感じになります。
●
●Masterで損する日はVISA/JCBを使う。
●最初からVISA/JCBを使うのもアリなのは、Masterレートが特に悪い通貨
(英ポンド、フィリピンペソ、マレーシアリンギット、カナダドル、タイバーツ)
●JCBかVISAの選択は、VISAが無難。JCBはギャンブル要素あり
では、この使い方を元に、通貨ごとに見てみましょう。
↓下の通貨名をクリックすると下の通貨ごとの解説に飛びます。
アメリカ米ドル ユーロ 台湾ドル 中国元 マレーシア・リンギット フィリピン・ペソ オーストラリアドル 韓国ウォン シンガポール・ドル イギリス・ポンド カナダ・ドル タイ・バーツ ベトナム・ドン 香港ドル インドネシア・ルピア
両替レート比較グラフの注意点
データは、それぞれ、VISA公式サイト、マスターカード公式サイト、JCB公式サイトから取ってきたデータを元に作成しています。(↑VISAが日本のサイトで公開になりました)
上乗せ率の計算は、例えば、円→ドルのレートと、ドル→円のレートを調べ、その中間値からの差を上乗せ率としています。それを1日ごとに比較。
(※マスターは前日のレートのまとめを当日レートとして公表している感じなので、比較のためにグラフでは、マスターのレートを1日遅らせて比較しています)
上記のJCB公式サイトのデータは数値が途中で切り捨てられているのですが、こちらのJCB Base rateのページを使うと、JCBレートの細かい数字まで出せることが判明しました!
アメリカ(米ドル)でVISA/Master/JCB比較
アメリカの通貨ドルでは、レートの単純比較では、良い順にJCB、マスター、VISA。
でもJCBに対するマスター/VISAの差は、平均すると0.23%や0.24%と小さめなので、マスター/VISAでも十分良いです。
使い方としては、ニュースなどの中間レートを見て、昨日のレートのほうが良い日(=マスターが得する日)ならマスターを使い、そうでないならVISAかJCBを使う、というのがおすすめ。
ユーロでVISA/Master/JCB比較
ヨーロッパの通貨ユーロでも、単純レート比較なら、お得な順に、JCB、マスター、VISA。
でもJCBに対するマスター/VISAの差は、平均すると0.01%や0.02%と非常に小さいので、マスター/VISAで十分です。
使い方としては、ニュースなどの中間レートを見て、昨日のレートのほうが良い日(=マスターが得する日)ならマスターを使い、そうでないならVISAを使う、というのがおすすめ。
台湾ドルでVISA/Master/JCB比較
台湾ドルが使われる台湾では、レート単純比較なら、お得な順に、VISA、JCB、マスター。
でもJCBに対するマスター/VISAの差は小さいので、マスター/VISAでも十分です。
使い方としては、ニュースなどの中間レートを見て、昨日のレートのほうが良い日(=マスターが得する日)ならマスターを使い、そうでないならVISAを使う、というのがおすすめ。
中国元でVISA/Master/JCB比較
中国元(人民元)が使われる中国本土では、単純レート比較すると、マスター/VISA/JCBの3者のレートが、ほぼ同じ。
使い方としては、ニュースなどの中間レートを見て、昨日のレートのほうが良い日(=マスターが得する日)ならマスターを使い、そうでないならVISAを使う、というのがおすすめ。
マレーシア・リンギットでVISA/Master/JCB比較
マレーシアの通貨リンギットのレートでも、単純レート比較なら、JCBが強さを見せ、1位。
注意したいのは、リンギットは、1位JCBが0.2%なのに対し、VISA/マスターが0.6%と0.4%も違いがあること。JCBだけが飛び抜けて良いレートの通貨です。
なので、使い方としては、ニュースなどの中間レートを見て、昨日のレートのほうが0.4%以上良い日(=マスターが得する日)ならマスターを使い、その他の日は、JCBを使う、というのがおすすめ。
フィリピン・ペソでVISA/Master/JCB比較
ペソでは3位のマスターカードだけがかなり悪いレートになっているので注意が必要。3位のマスターは、1位のJCBと0.45%多い手数料です。
なので、使い方としては、ニュースなどの中間レートを見て、昨日のレートのほうが0.5%以上良い日(=マスターが得する日)ならマスターを使い、その他の日は、JCBを使う、というのがおすすめ。
JCBとVISAの差は、0.13%と少ないので、どちらでもいいでしょう。
オーストラリア豪ドルでVISA/Master/JCB比較
オーストラリアの通貨「豪ドル」の単純レート比較では、1位JCB、同率2位でマスターとVISA。
でもJCBに対するマスター/VISAの差は、平均すると0.23%や0.24%と小さめなので、マスター/VISAでも十分良いです。
使い方としては、ニュースなどの中間レートを見て、昨日のレートのほうが良い日(=マスターが得する日)ならマスターを使い、そうでないならVISAかJCBを使う、というのがおすすめ。
韓国ウォンでVISA/Master/JCB比較
韓国の通貨ウォンの単純レート比較は、お得な順に、1位VISA、2位マスター、3位JCB。唯一、JCBがダメな場所が韓国です。ただし、3者のレート差は小さいですけどね。
使い方としては、ニュースなどの中間レートを見て、昨日のレートのほうが良い日(=マスターが得する日)ならマスターを使い、そうでないならVISAを使う、というのがおすすめ。
シンガポール・ドルでVISA/Master/JCB比較
シンガポール・ドルの単純レート比較は、1位JCB、2位マスター、3位VISA。
ただ、JCBに対するマスターの差は、平均すると0.3%くらいと大きくないので、マスターメインで良い感じです。
使い方としては、ニュースなどの中間レートを見て、昨日のレートのほうが良い日(=マスターが得する日)ならマスターを使い、そうでないならVISAかJCBを使う、というのがおすすめ。
イギリス・ポンドでVISA/Master/JCB比較
イギリス・ポンドは、他とは一番違う結果に。1位JCBと2位VISAが良く、3位マスターカードのレートがかなり悪いです。
マスターカードは、イギリスとフィリピンでだけ特に悪いので注意。これは覚えておきましょう。
なので、使い方としては、ニュースなどの中間レートを見て、昨日のレートのほうが0.6%以上良い日(=マスターが得する日)ならマスターを使い、その他の日は、VISAかJCBを使う、というのがおすすめ。
JCBとVISAの差は、0.2%と少ないので、どちらでもいいでしょう。
カナダ・ドルでVISA/Master/JCB比較
カナダドルでの単純レート比較の順位は、ダントツ1位JCB、次に2位マスター、3位VISA。カナダドルもJCBに対してMaster/VISAの差が「0.40%」と大きいので、JCBが得になりやすい通貨。
なので、使い方としては、ニュースなどの中間レートを見て、昨日のレートのほうが0.4%以上良い日(=マスターが得する日)ならマスターを使い、その他の日は、JCBを使う、というのがおすすめ。
タイ・バーツでVISA/Master/JCB比較
タイ・バーツの単純レート比較の順位は、JCBが1位で、同率2位でVISA/マスター。
タイ・バーツもJCBに対してのVISA/Masterの差が約0.4%と大きい通貨です。両替手数料が高いのもタイ・バーツの特徴で、VISA/マスターだと約0.8%も取られます。
なので、使い方としては、ニュースなどの中間レートを見て、昨日のレートのほうが0.4%以上良い日(=マスターが得する日)ならマスターを使い、その他の日は、JCBを使う、というのがおすすめ。
ベトナム・ドンでVISA/Master/JCB比較
ベトナム・ドンの単純レート比較、結果は、1位JCB、2位VISA、3位マスター。
でもJCBに対するマスター/VISAの差は、平均すると0.28%や0.20%と大きくないなので、マスターメインでも十分良いです。
使い方としては、ニュースなどの中間レートを見て、昨日のレートのほうが良い日(=マスターが得する日)ならマスターを使い、そうでないならVISAかJCBを使う、というのがおすすめ。
香港ドルでVISA/Master/JCB比較
使い方としては、ニュースなどの中間レートを見て、昨日のレートのほうが良い日(=マスターが得する日)ならマスターを使い、そうでないならVISAかJCBを使う、というのがおすすめ。
インドネシア・ルピアでVISA/Master/JCB比較
インドネシア・ルピアは、以前は、小数点以下が小さすぎてJCBレートは判定不能でしたが、今回、算出方法を発見したので、初の結果になります。
単純レート比較の結果は、1位JCB、2位VISA、3位マスター。でもJCBに対するマスター/VISAの差は、平均すると0.21%や0.14%と小さめなので、マスターやVISAでも十分良いです。
使い方としては、ニュースなどの中間レートを見て、昨日のレートのほうが良い日(=マスターが得する日)ならマスターを使い、そうでないならVISAかJCBを使う、というのがおすすめ。
まとめ
今回のまとめです。
単純なレート比較だけなら↓こうなりますが、JCBが一番得なわけではありません。
●
なぜなら、実際には、↓こういうクセがあるから。
VISA/Master/JCBのクセ(傾向)
●Master: がある(例 8/10のATM引出しには8/9の公式レートが適用される)。なので、ニュースなどで昨日と今日の中間レートを比較し、昨日のレートのほうが良いなら、その日のカード利用は得になる。 のが強み。
●JCB:レートは良い。ただし、翌日のレートが適用される傾向が不安要素。翌日が良いレートなら得するが、翌日が悪いレートなら損をする。つまり、得か損かはギャンブル的。
●VISA:レートは無難な感じ。リアルタイムレートに一番近く、1日の中でもレート変化あり。
クセをふまえると、結論としては、↓こうなる。
単純なレート比較ではJCBの圧勝だが、JCBを使えば必ず得なわけではない。Master/VISA/JCBのクセを考慮して、
結論を踏まえ、得する使い方を考えると、↓こうなる。
●
●Masterで損する日はVISA/JCBを使う。
●最初からVISA/JCBを使うのもアリなのは、Masterレートが特に悪い通貨
(英ポンド、フィリピンペソ、マレーシアリンギット、カナダドル、タイバーツ)
●JCBかVISAの選択は、VISAが無難。JCBはギャンブル要素あり
以上です。
マスターで一番おトクなカードは、手数料が最も少なく済む、↓このアコムのカード。
セディナのマスターでもいいのですが、2024年12月以降、改悪の可能性が高いので、ご注意ください。
セディナは2024年4月に三井住友カードに吸収されました。そして、システムが統合される2024年12月からは、セディナは「②カード会社の取る海外ATM手数料」と「⑤繰上返済(電話代&振込手数料)」の2つが有料になる可能性が高いです。。。セディナのみでやってきた方は、早めにアコムに切り替える準備をしたほうが良さそうです。